「10月から新しい会社で働きたい。でも、今の会社にはいつ退職を伝えればいいのだろう」。9月末退職を考えると、このタイミングがいちばん悩みやすいところです。
結論からいうと、9月30日に退職したいなら、法律上の最低ラインだけを見るのではなく、就業規則と引き継ぎ期間を確認し、できるだけ早く直属の上司へ伝えるのが基本です。
厚生労働省は、期間の定めのない雇用契約について、民法上は原則として退職の申入れから2週間で終了すると案内しています。一方、会社の就業規則に「1か月前まで」などの退職手続きが定められていることもあるため、円満退職を目指すなら先に確認しておいたほうが話を進めやすくなります。
この記事では、9月末退職・10月入社を想定しながら、上司への切り出し方、引き止められたときの考え方、引き継ぎ、有給休暇まで順番に整理します。退職の話は少々気が重いものですが、段取りが見えるだけで「何から話せばいいの?」という霧はかなり晴れてきます。
9月末退職なら最初に「退職日」から逆算する
転職活動と退職手続きは、別々に考えると日程がぶつかりやすくなります。10月1日に次の会社へ入社するなら、現在の会社では9月30日を退職日とするというように、ゴールから逆算すると整理しやすくなります。
リクナビNEXTも、転職スケジュールは入社時期から逆算すると組み立てやすいと説明しています。また、内定後には上司への退職申出や業務の引き継ぎがあるため、予定より退職日がずれる可能性にも触れています。

9月末退職を考える場合は、次の順番で予定を書き出してみてください。
- 10月1日:新しい会社への入社予定日
- 9月30日:現在の会社の退職希望日
- 9月後半:有給休暇を使う場合の候補期間
- 9月前半〜中旬:引き継ぎを終えたい時期
- その前:上司へ退職意思を伝え、退職手続きを始める
ここで注意したいのは、すべての人が同じ日程になるわけではない点です。担当業務、繁忙期、後任者の有無、有給休暇の日数、会社の就業規則によって必要な期間は変わります。
「法律では2週間だから、2週間前に言えば何も問題ない」とだけ考えて予定を組むと、引き継ぎや社内手続きが詰まりやすくなります。円満退職を目指すなら、法律上の扱いと、会社内で実際に必要な準備期間を分けて考えましょう。
退職を伝える前に就業規則を確認しておく
退職を決めたら、いきなり上司の席へ向かう前に、就業規則や社内の退職手続きを確認しておくと安心です。会社によって「退職希望日の1か月前までに申し出る」などのルールが置かれていることがあります。
厚生労働省の「モデル就業規則(令和7年12月版)」では、期間の定めのない雇用について、労働者はいつでも退職を申し出ることができ、会社の承認がなくても、民法627条により原則として申出から14日を経過したときに退職となる旨を解説しています。
ただし、モデル就業規則は各社にそのまま適用される就業規則ではありません。厚生労働省も、各事業場の実情に合わせて就業規則を作成するためのモデル例として公表しています。実際の退職では、自分の勤務先の就業規則と雇用契約を確認してください。
ここが少々ややこしいところです。退職は「辞めます」の一言だけで終わる手続きではなく、会社ごとの書類や申請経路が加わることがあります。
確認したいもの
- 就業規則の「退職」「退職手続き」の項目
- 雇用契約が期間の定めのない契約か、有期契約か
- 退職届・退職願の提出方法
- 有給休暇の残日数
- 貸与されているパソコン、社員証、制服など
- 引き継ぐ業務と現在進行中の案件
特に、契約社員など契約期間が決まっている働き方では、期間の定めのない雇用と同じように考えられない場合があります。有期契約の途中で退職したい場合は、契約内容や事情を確認してください。
上司へ退職を伝えるタイミングは「忙しい瞬間」を避ける
退職の意思は、基本的には直属の上司へ最初に伝えます。ただ、上司が会議へ走り出す直前や、部署全体がトラブル対応をしている最中に切り出すと、落ち着いて話せません。
そこで、「少しご相談したいことがあります。今日か明日、15分ほどお時間をいただけますか」と先に面談の時間を確保します。退職の内容をメールやチャットですべて書くのではなく、まず話す時間を取るための連絡として使うと自然です。

退職を伝える順番
- 直属の上司へ面談の時間をお願いする
- 退職する意思をはっきり伝える
- 希望する退職日を伝える
- 引き継ぎについて相談する
- 会社の手続きに沿って退職届などを提出する
この順番なら、「退職したいのですが……どうしましょう」という相談だけで終わりにくくなります。退職すること自体を決めているなら、意思は曖昧にしないほうが話が進みます。
上司への切り出し方は短く、退職日まで伝える
退職理由を長々と説明しなければ失礼になる、と思う人もいるかもしれません。しかし、円満に話を進めるために大切なのは、会社への不満を並べることではなく、退職の意思と希望日を相手が理解できる形で伝えることです。
たとえば、次のように切り出せます。
「お時間をいただきありがとうございます。今後の働き方について考えた結果、退職することを決めました。9月30日を退職日として希望しています。担当業務については、できるだけ支障が出ないよう引き継ぎを進めたいと考えています」
これなら、「退職する意思」「希望日」「引き継ぐ姿勢」の3つが伝わります。説明が短すぎて冷たいわけでもなく、退職理由が長編小説になることもありません。
転職先の会社名まで言わなければいけない?
転職することを伝える場合でも、転職先の会社名や詳しい待遇まで話す必要があるとは限りません。聞かれたときは、「次の勤務先については詳細を控えさせてください」と答える方法もあります。
今の会社への感謝を伝えることと、転職先の情報をすべて公開することは別の話です。円満退職は「全部しゃべる大会」ではありません。
引き止められたときは退職理由を増やさない
会社から「もう少し考えてほしい」「待遇を見直すから残れないか」と引き止められる可能性はあります。ここで話が長引く人に多いのが、相手を納得させようとして退職理由を次々に追加するケースです。
理由を増やすほど、会社側には「その問題を解決すれば残ってくれるのでは」と受け取られる余地が生まれます。
すでに転職と退職を決めているなら、「お気遣いありがとうございます。ただ、退職の意思は変わりません」と、結論を変えずに伝えるほうが話を整理しやすくなります。

「後任が決まるまで待って」と言われたら
後任者が決まっていないと聞けば、「自分が辞めたら困るのでは」と心配になるかもしれません。ただし、後任者の採用時期と、自分の退職希望日は分けて話したほうが整理できます。
退職日を無期限に延ばすのではなく、「9月30日の退職を希望しています。その日までに引き継げるよう、業務一覧と資料を作成します」と伝える方法があります。
引き継ぎへ協力する姿勢は見せながら、退職日の話まで曖昧にしないのがポイントです。
「今辞められると困る」と強く言われたら
期間の定めのない雇用では、会社が同意しなければ一切退職できないという仕組みではありません。大阪労働局も、民法627条について、期間の定めのない雇用契約では解約の申入れから2週間で終了する旨を案内しています。
ただし、実際のトラブルでは雇用契約の種類や就業規則など個別事情が関係します。会社が退職届を受け取らない、退職日について深刻な争いになったといった場合は、一人で法律判断を決めつけず、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなどへ相談してください。
9月末までに引き継ぎを終えるチェックリスト
円満退職で差が出やすいのは、「辞めると伝えた後」です。引き継ぎでは、後任者があなたと同じ知識を持っている前提で説明しないことが大切になります。
担当者本人には当たり前でも、後任者には初めて見る仕事かもしれません。「これは見れば分かるだろう」が、引き継ぎではなかなか分からないものです。

引き継ぎで整理したい項目
- 担当している業務の一覧
- 毎日・毎週・毎月行う仕事
- 進行中の案件と現在の状況
- 次に行う作業と期限
- 社内の関係部署と担当者
- 取引先との連絡状況
- ファイルや資料の保存場所
- 業務で使うシステムや申請手順
- トラブルが起きやすい点と確認先
なお、パスワードを個人のメモに書いてそのまま渡すなど、会社の情報管理ルールに反する方法は避けます。アカウントの引き継ぎ方法は社内ルールに従ってください。
「人に渡す仕事」と「自分で終える仕事」を分ける
すべての仕事を後任者へ丸ごと渡すと、かえって引き継ぎが大きくなります。退職日までに自分で完了できる案件と、退職後も続く案件を分けると整理しやすくなります。
退職後も続くものは、現在地、次の期限、関係者、注意点が分かる形にしておきましょう。後任者に必要なのは、あなたの頭の中を完全再現することではなく、「次に何をすればよいか」が分かる情報です。
有給休暇を使いたいなら退職日から逆算して相談する
有給休暇が残っている場合、「9月30日を退職日にして、最後の何日かを有給休暇にしたい」と考える人もいるでしょう。
厚生労働省は、年次有給休暇について原則として労働者が請求する時季に与える制度であり、事業の正常な運営を妨げる場合には使用者が別の時季へ変更できると説明しています。
一方、退職日を越えて別の日へ変更することはできません。厚生労働省の労働条件に関する案内でも、退職間近に残存年休を使い切る申請があった場合は、退職後へ時季を変更できないため、使用者は時季変更権を行使できないとされています。
ただ、円満な引き継ぎまで考えるなら、退職直前になって初めて「明日から全部有給休暇にします」と伝えるより、残日数を早めに確認して上司と日程を調整するほうが混乱を減らせます。
退職希望日・最終出社日・有給休暇を使う日は同じ日とは限りません。カレンダーに分けて書いてみると、一気に分かりやすくなります。
9月末退職・10月入社のモデルスケジュール
ここまでを、9月30日退職・10月1日入社の例として並べてみます。これは法律上の期限を示す表ではなく、引き継ぎまで含めて考えるためのモデルです。実際の日程は就業規則と勤務状況に合わせて調整してください。
| 時期 | やること | 確認する点 |
|---|---|---|
| できるだけ早い時期 | 就業規則と雇用契約を確認 | 退職申出期限、提出書類 |
| 退職意思を固めたら | 直属の上司へ面談を依頼 | 退職希望日を明確にする |
| 退職日が固まった後 | 引き継ぎ項目を一覧化 | 後任、案件、期限、資料 |
| 9月前半〜中旬 | 引き継ぎを進める | 抜けている業務がないか |
| 9月後半 | 残務、有給休暇、返却物を整理 | 最終出社日と退職日の違い |
| 9月30日 | 退職予定 | 必要な社内手続きの完了 |
| 10月1日 | 新しい勤務先へ入社予定 | 入社日の変更がないか確認 |

転職先の入社日を先に確定している場合は、現在の会社の退職日が本当に間に合うかを早めに確認してください。退職日がずれると、新旧の勤務先の日程調整が必要になる可能性があります。
退職時にやりがちな3つの失敗
1.同僚へ先に話してしまう
仲の良い同僚には先に相談したくなるものですが、正式に上司へ話す前に部署内へ広がると、上司が別の人から退職を知ることがあります。
正式に決めた退職の意思は、直属の上司へ先に伝えるほうが話を進めやすいでしょう。
2.退職理由を会社への不満だけにする
人間関係や待遇への不満が転職のきっかけになることはあります。ただ、退職の面談で細かな不満を一つずつ議論し始めると、「改善すれば残るのか」という話へ進みやすくなります。
退職を決めているなら、「今後のキャリアを考えて決めました」など、必要な範囲で簡潔に伝えれば十分です。
3.引き継ぎを最後の1週間にまとめる
自分では1週間で終わると思っても、後任者から質問が出れば時間が必要になります。早めに一覧を作り、実際に後任者が作業できるか確認する期間を残したほうが安心です。
こんな場合は自分だけで判断せず相談を
通常の退職手続きなら、就業規則を確認し、上司と退職日・引き継ぎを話し合うことで進められることが多いでしょう。しかし、次のような状況では労働問題として整理が必要になることがあります。
- 退職届を受け取ってもらえない
- 退職を一切認めないと言われる
- 有期契約の途中で退職したい
- 退職に伴い高額な違約金などを求められている
- 有給休暇の扱いで会社と話がまとまらない
- 退職日をめぐって深刻な争いになっている
厚生労働省・都道府県労働局には、労働問題を相談できる総合労働相談コーナーがあります。個別事情によって判断が変わる場合は、公開されている一般情報だけで結論を出さず相談してください。
よくある質問
9月末退職なら9月に入ってから伝えても間に合いますか?
期間の定めのない雇用については民法上の原則がありますが、円満退職まで考えるなら就業規則や引き継ぎ期間の確認が必要です。9月末退職を希望するなら、日程を後ろへ延ばすより、退職意思が固まった段階で早めに確認・相談したほうが進めやすくなります。
退職を伝える前に転職先の内定を取ったほうがいいですか?
在職中に転職活動をする場合、内定と入社条件を確認してから退職を申し出る方法があります。ただし、転職先の入社日と現在の会社の退職時期が合うかも確認してください。
引き止められたら退職理由を詳しく説明するべきですか?
相手を説得するために理由を増やす必要はありません。退職を決めているなら、意思が変わらないことと希望退職日を簡潔に伝え、引き継ぎの相談へ進むほうが話を整理できます。
退職前に有給休暇を使えますか?
年次有給休暇は退職前でも取得できます。退職後の日へ時季を変更することはできませんが、引き継ぎとの調整もあるため、残日数と希望日を早めに会社へ伝えておくと予定を組みやすくなります。
会社が退職を認めてくれない場合はどうすればいいですか?
期間の定めのない雇用では、会社の同意がなければ一切退職できないというものではありません。ただし、雇用契約や就業規則など個別事情があります。話がまとまらない場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなどへ相談してください。
まとめ:9月末退職は「伝える日」より前の準備でスムーズさが変わる
9月末退職・10月入社を目指すなら、退職を伝えるタイミングだけを考えるのではなく、退職日、就業規則、引き継ぎ、有給休暇、次の会社の入社日を一つの予定表に並べると判断しやすくなります。
退職の意思が固まっているなら、上司には「退職を決めたこと」「希望する退職日」「引き継ぎへ協力すること」を簡潔に伝えましょう。引き止められても、退職理由を増やして議論を広げる必要はありません。
9月30日から逆算して、今日できる最初の一歩は「就業規則を確認し、引き継ぐ仕事を書き出すこと」です。準備ができたら、直属の上司へ面談の時間をお願いしてください。
参考資料
- リクナビNEXT「9月入社を目指す場合の『転職活動時期』は?」(確認日:2026年8月27日)
- 大阪労働局「よくあるご質問(退職・解雇・雇止め)」(確認日:2026年8月27日)
- 厚生労働省「モデル就業規則について」(確認日:2026年8月27日)
- 厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト「年次有給休暇取得促進」(確認日:2026年8月27日)
- 厚生労働省「スタートアップ労働条件・年次有給休暇」(確認日:2026年8月27日)
